大規模修繕工事に関するQ & A

 

【大規模修繕工事について】

Q: 大規模修繕工事はなぜ実施しなければならないのですか? 

A: 例えば都心に近いマンションでは排気ガスのためにコンクリートの中性化が早く進みます。また、コンクリート構造物にはひび割れが発生しますが、これに対する適切な処置を行わないと中の鉄筋が錆びて構造物としての耐久性を損ねることになります。この他、タイル貼りの建物ではタイルが剥離するおそれがあります。これが落ちて人に当たったら大変なことになります。そこでこのような状況を早期にとらえ、適切な保護処置を行うことによって建物として安心して長く使うために大規模修繕工事が必要になるわけです。

Q: 「最初の大規模修繕工事はそのマンションを建設した会社に依頼するのが普通」という話を聞いたのですが、実情はどうなのですか?

A: 建設した会社が大規模修繕工事を必ず受注するということはないと考えます。例えば南流山弐番街を建設したのは大林組ですが、大規模修繕工事を実施したのは清水建設系列の改修工事専門のシミズビルライフケアでした。管理組合の大規模修繕専門委員会では最初の長期修繕計画を作成した野村住宅管理の技術部の協力を得ながら、委員会で仕様書の作成などを行い、競争入札を実施していきました。

 昔の木造住宅の頃は出入りの大工さんに建物の一生を面倒みてもらうという形をとっていて、ゼネコンは大工から始まった会社が多いことから、以前はそのような形が多かったのではと思います。

Q: 大規模修繕工事の準備はいつ頃から始めればよいのですか?

A: 長期修繕計画で予定される大規模修繕工事実施時期の2・3年前から大規模修繕専門委員会を組織できるとよいと思います。大規模修繕の実施年の前年は工事仕様書の決定、総会資料の作成などの実務に多くなることから、マンションの現状調査や専門委員会のメンバーの意識レベルをあわす上でも最低2年は必要と考えます。

Q: 長期修繕計画に書かれた項目は予定された年にやらねばならないのですか?

A: 長期修繕計画はひとつの指針にしか過ぎません。例えば大規模修繕工事であればそれを予定する年の前年、あるいは前々年に建物診断をして、工事を先延ばしして大丈夫と判断されれば修繕計画を変更していけばよいものです。ただ、例えば給排水設備の漏水が各所にでて個別に対処する修繕費が大きくなるよう場合には、前倒しして実施することも考えねばなりません。

Q: 管理組合で大規模修繕工事の工事仕様書を作成できる人材がいないのですが、どうしたらよいですか?

A: マンションの管理会社が技術部門をもって個別のマンションの長期修繕計画にも対応できるか、あるいはマンションの日常管理業務のみを専門としているかで方法が異なります。前者(当マンションはこれに該当)であればマンション管理会社の技術部門と相談しながら進めるのがよいでしょう。後者の場合は大規模修繕工事のコンサルタントとして対応してくれる設計事務所がありますので、これを利用するのがよいと思います。なお、改修工事は既存の状態を把握し、様々な制約条件の中で仕様書をまとめあげねばならないため、新築工事より難しく手間のかかるものです。そして改修工事の仕様書を作成する場合、長期修繕計画に基づいた項目のみとなりがちです。このために、「あの時に一緒に処理しておけば費用が余分にかからないで済んだのに」ということがしばしば発生します。この事態を避けるため、マンション内を現地調査して不具合点を洗い出し、一緒に対処した方がよいものは同時に実施できるように仕様書を作成することが必要です。この面から改修工事の現場をよく知る実績のある事務所を選ぶことが必要です。

Q: 工事がちゃんと行われているかのチェックはどうしたらよいですか?

A: 施工会社に任せる場合は、工事数量は施工のチェック項目などを明確にして、例えば後者については写真を提出させるとか、管理ポイントを明確にして実施することが考えられます。

 南流山弐番街では施工会社とは別に工事監理会社と契約しました。これは施工とその監理という責任を明確にすることで、よい施工がなされることを確実にするためのものでした。なお、工事内容が単に外壁補修・塗装という範囲だけでなく、建物の使い勝手上の不具合点の改善など、非常に多岐にわたっていることもそのような形態とした大きな要因です。また、大規模修繕大規模修繕専門委員会のメンバーは仕事を持つことから日常の施工会社への対応は不可能であり、また、何かトラブルがあった場合、専門委員会のメンバーが責任を負えるものではないこともあります。

Q: 大規模修繕委員会を組織したいと思うのですが、どのような人を選んだらよいですか?

A: 建築、設備の知識に明るい人が加わるのがよいです。それが困難な場合、上記のようにスタートの段階から設計コンサルタントを加えるのがよいと考えます。これらのメンバーは少なくとも大規模修繕工事が終わるまでの期間、委員会のメンバーとして実際に活動してくれる人でなければなりません。建築会社の人が加わるのは技術的には心強いですが、「自分の住む場所だから」と常に居住者の立場でものを考えられる人でなければなりません。「自分の勤める会社の受注に貢献しよう」という人はメンバーとしてふさわしくありません。このようなメンバーが加わってその会社が受注した場合、利益率を高めるための施工途中の工事仕様の変更をしても、専門でない他のメンバーはそれがわからず、結果的に管理組合が不利益を被ることも考えられます。

 

【給排水設備改修工事について】

Q: ライニング鋼管の直管の途中が錆びて穴があき、水漏れしました。端部であれば、錆が原因と理解できるのですが、こんなことがあるのでしょうか?

A: ライニング鋼管の途中で錆が発生するのはライニングが損傷していて、ライニングとして機能しなかったことを意味します。ライニングの損傷は、配管工事後のボード工事で軽量鉄鋼の溶接のためにアースを給水管にとり、そのアース部が大電流で熱せられ、ライニングが局部的に溶けたことが原因の可能性が高いです。建設現場ではボード工事施工業者にアースの取り方を指導していますが、昔は不心得の職人がいました。

 給水管の改修工事について検討する場合、漏水事故は重要な情報をもたらしてくれます。配管の接合部のライニングされていない部分の錆の進行が原因の場合、その建物の設備全体にもあてはめて考えることができます。一方、上記のように直管部分の漏水の場合、配管全体の錆の進行と切り分けて考える必要があります。管理組合として漏水が発生した場合、その状況を常に正確に記録し、その後の給排水設備の改修工事の検討に役立てるようにしなければなりません。