【水廻り設備のリフォーム】

 

1. ユニットバス

(1) 現状の認識

 FRP(Fiber Reinforced Plastics、繊維強化プラスチック)製のユニットバスは「耐久性の高いもの」と思われがちです。確かにFRP自体は耐久性がありますが、それに接続される排水管が配管用炭素鋼鋼管の場合、その腐食が耐久性に影響を与えます。以下にユニットバス(YAMAHA MB-1216BH)の排水管の図と25年を経たトラップと排水管を半割にした写真を示します。配管の内面の下側は長期の使用により腐食し、薄くなっているのがわかります。このYAMAHAのユニットバスの場合、トラップ構造から更生工事(配管内面を研摩して樹脂を塗布し、腐食の進行を防止する方法)は適用することができず、また、配管の更新はユニットバスの洗い場の床面を大きく切って開口を設けて配管を交換し、その開口部を補修するという現実的でない方法でしか対応できません。
 このため、このタイプのユニットバスではユニットバス自体を更新するしか、将来、発生するユニットバス排水管からの漏水を防ぐことができません。ユニットバスの更新が必要かどうかは、各マンションに備えられた竣工図に含まれるユニットバス本体の図面を見て判断することになります。
 このタイプのユニットバスが各住居に設備されたマンションでは、管理組合が区分所有者にユニットバスの計画的更新を広報していく必要があります。(ユニットバスが更新されないままの状態であると、ユニットバスの排水口周辺から漏水が始まり隣接する居室の濡らすことになり、また、最悪、下階への漏水の原因ともなります。)

[ユニットバスの排水管]


トラップと排水管を半割したもの

トラップに接続された配管の腐食による減肉

[配管の酸洗い後の状況]

図1 ユニットバス(YAMAHA MB-1216BH)の排水管

 例えばユニットバス(YAMAHA MB-1216BH)の浴槽の長手方向の下部長さは84cmで、大人が足を伸ばして入浴するには窮屈なものです。今日、同 じ1216サイズのユニットバスで広い浴槽(例えばWRシリーズ1216(TOTO)の浴槽の下部長さは101cm)のものが製品化されていることから、入浴の快適性 の向上がリフォームよって図ることができます。
 次にユニットバスの選定に関する留意事項を解説します。

 

(2) 更新可能なユニットバスのサイズ

 当マンションのユニットバスのサイズは1216ですが、1216とされるユニットバスには当マンションのユニットバス設置スペースに納まらないものがあります。「マンションリフォーム用」とするものから選ぶことが必要で、表1にユニットバスの部屋の寸法、標準のユニットバスの外寸、当マンションに適用可能なユニットバスをまとめます。
 表1に示したリフォーム用のユニットバスのトラップ排水の高さは、標準のもののトラップ排水高さより高いことから、水勾配の問題はありません。
 ユニットバスの部屋の戸境壁の床面から高さ2mから上に梁(出の寸法は1〜4階が10cm、5〜9階が7.5cm)があり、この梁との干渉を避けるため、更新するユニットバスでも例えば「梁カット部材」(TOTO)といわれる部材を天井部に使用します。
 脱衣所と洗い場の段差の低減をセールスポイントとする製品があります。これを実現するには洗面所の床面の高さが表1の浴室沓ずり高さと同じであることが必要です。当マンションの洗面所の床面の高さは17cmで、この高さは洋風大便器と汚水排水管の接続高さで決定されるため、高くすることはできません。よってユニットバスのドア枠のまたぎ越え高さ13.5cm([浴室沓ずり高さ]−[床高さ])は低くできますが、メーカーのいうような段差をなくすことはできません。

表1 マンションリフォーム用ユニットバス(2008年9月現在)

メーカー 製品名
導入可能なサイズ
寸法(mm)
奥行×幅×高さ
トラップ排水
高さ(mm)
浴室沓ずり
高さ(mm)
部屋寸法 1285×1720×2520
YAMAHA MB-1216BH (標準) 1250×1680×2250 78 305
TOTO WRシリーズ 1216プラス 1240×1690×2288 88 217
WHシリーズ 1216 1280×1664×2299 88 241
INAX BYUシリーズ W1216 1246×1696×2501* 113 215
松下電工 リノーヴァWタイプ1216 1260×1660×2250 93 210

*:天井換気扇取り付け高さを含む。注記なきものは換気扇の高さを含まず。

■ 1216より大きいサイズへの対応

 1316や1416のサイズのユニットバスを入れたい場合は、押入れとの間の間仕切り壁を解体して新たな壁を造作する必要があります。なお、当マンションのトイレは汚水排水管の位置から現在の位置に限定されます。既存のトイレの室内幅はメンテナンス上、必要最低限の寸法のため、これを狭めるような長手方向の長い1317といったユニットバスの導入は無理があります。

(2) ユニットバスのオプション

 ユニットバスは「保温機能のある浴槽」などの改良が進められています。表2にユニットバスのオプションなどを決めるのに参考となる事項をまとめます。

表2 ユニットバスの周辺機器などの選定

項目 解説
天井換気扇
(2室タイプ)
天井換気扇は不可欠な装置です。トイレの排気も兼ねますので、「2室/3室同時換気」と表示された換気扇を選びます。
バスヒーター 標準のユニットバスの浴槽にはTESを利用したバスヒーターが内蔵されます。同様の機能が必要な場合、例えば「セントラルヒーティング設備による循環温水を利用する浴槽用追焚装置」(TOTO)といったオプションを選びます。
「魔法びん浴槽」(TOTO)、「サーモバス」(INAX)といった浴槽に断熱材を組込んだ浴槽が近年、登場していて省エネになります。断熱材組込み浴槽とバスヒーターの両方は選択できない場合があります。メーカーで確認してください。
ドア枠 新しいユニットバスに合わせてドア枠の改修が必要です。ドア幅は700mm(有効開口幅566mm)が多いですが、加齢時の使用も考慮して800mm(有効開口幅666mm)を選ぶことも検討されます。
水栓 浴室用の水栓は2ハンドルとサーモスタット式が選択できますが、後者は操作性がよく、熱湯による火傷事故防止にもなることから選択をお薦めします。
洗濯用の配管 風呂の残り湯を洗濯で使う際にホースが外れて水濡れ事故が起きています。「ノコリ〜ユECO」(TOTO)や「洗濯用ふろ水利用システム」(INAX)のように浴槽に取水用の加工をし、洗濯機側に残り湯用水栓を設けるオプションがあります。
ブローバス
【選定不可】
作動音が下階を含む近隣住居への騒音源となるため、導入できません。

 

(3) 配管のメンテナンスと点検口

 今日のユニットバスの配管には樹脂管が多く使用されています。そこで将来のメンテナンス工事のためにユニットバス側の樹脂管と更生工事を行ったライニング鋼管側の接続部で配管を外せるように開口部を設ける必要があります。開口部を設ける方法として、洗面所の床面に点検口を設けるものと、ユニットバスに点検口のあるタイプを選ぶという2つがあります。
 近年のマンションリフォーム用のユニットバスには床大型点検口(TOTO、WRシリーズ)、洗い場大型点検口(INAX BYUシリーズ)のように洗い場が二重構造となっていて点検口となります。しかし、1.(2) bで述べたように工事業者の中には点検口の意味を理解しないで配管を行なうものがいます。点検口付のユニットバスにリフォームする場合、本マニュアルの巻末の【技術資料】を業者に渡して指示してください。