キッチン
標準のキッチン流し台は水廻り設備として使い続けることができますが、経年による外観の劣化やキッチン関係の備品増大、あるいは最新のキッチン設備への対応で更新が考えられます。
キッチンのリフォームを計画する場合、給水・給湯管、排水管とともにレンジフードに接続されるダクトの位置が制約条件となります。その上で使い方(「半調理品の使用が多い」あるいは「手をかけた調理が多い」、家族構成(人数)、来客状況など)を考慮して計画の必要があります。
当マンションの給水・給湯管、排水管、ダクトの位置から、無理のないキッチンリフォームのレイアウトはI型(1列型)、II型(2列型)となります。そしてキッチン(K)とリビング・ダイニング(LD)部を仕切る壁の取扱い(残すか、撤去するか)によって、クローズドタイプ、セミクローズドタイプ、オープンタイプ、セミオープンタイプのキッチンのスタイルが実現できます。
次にキッチンのレイアウト、スタイルを含めてリフォームについて解説します。
1. キッチンの基礎知識
(1) 市場に流通するキッチン
キッチンのリフォームを検討する場合、商品知識が必要なため、まず、この現状を紹介します。
キッチンには流し台、調理台、コンロ台の独立した部品を並べて配置する「キッチンセット」(タカラスタンダードの呼称。「セクショナルキッチン」(サンウェーブ)などメーカーにより各種呼び方があり、流し台の後端の立ち上がり部(バックガード)の高さが9cmと高いことが外見的な特徴。当マンションの標準のキッチンもこのタイプ)と、流し用キャビネット、コンロ用キャビネットなどのフロアユニットを連結してそれらの上にシンク付のワークトップを載せて完成させる「システムキッチン」に大別されます。近年、バックガードの高いキッチンセットの特徴と流し台とコンロ台が一体のシステムキッチンの特徴を併せ持つ製品(例:「カンタン取替システムキッチン」(タカラスタンダード))も登場しています。なお、キッチンのリフォームで水栓まわりは目立つことから、水栓は既存のままとするこれらのリフォームには割り切りが必要です。
キッチンはワークトップの剛性(ステンレスワークトップではワークトップに力を加えて変形するか否か)、シンクの水はね音(シンク部分を指先で叩いて音が大きいか否かで判別可能)、レンジフードの作動音の大きさが選定上のポイントとなります。各メーカーはこれらを含めて仕上げと選択できるオプション(選定可能な吊戸棚の高さなどを含)でグレードを設定をしています。
マンションのキッチンリフォーム用として、システムキッチンの背面に配管スペースの切り欠きを設けた製品(「システムキッチンMタイプ」(タカラスタンダード))も登場しています。
安価なシステムキッチンには賃貸住宅向けに価格・外観が優先で、水はね音や耐久性などの基本性能に関わるステンレス厚を薄くした製品があることから、必ず、ショールームに出向いて資料を入手するとともに、実物を確かめた上で選定することが必要です。
(2) 基本レイアウト
調理に関わる代表的な手順として「貯蔵」、「準備」(材料を袋から出したり、洗ったりする作業)、「切り作業」(材料を調理のために切る作業)、「加熱」(焼く、揚げる、煮るなどの作業)、「配膳」(できあがった料理を器に盛り付けテーブルにセッティング)、「後片付け」(使い終えた調理器具や食器を洗ったり、ゴミの処理)があげられます。そしてこれらの作業に対応して食材庫・冷蔵庫、流し台などを配置するのが合理的なレイアウトとなります。
キッチンのリフォーム計画は将来的な冷蔵庫の更新も配慮の必要があります。当マンションが建設された1980年代は、55cm幅の250リットルの冷蔵庫が主流でこれにあわせて流し台の隣りの柱型前のスペースは幅58cmとなっています。近年は冷凍食品やレトルト食品の普及、スーパーマーケットで販売される半加工食品の多様化で、相対的に「貯蔵」(冷凍冷蔵庫を含む)や「加熱」以降の調理作業の比重が高まっています。冷蔵庫は大型化し、現在の主流は350リットル(幅60cm)や450リットル(幅68.5cm)となり、容量の多いものほど消費電力が少ないという逆転も起きています。58cm幅に入る容量の多い冷蔵庫は日立(300リットル)、三菱電機などの数機種となり、選択肢は多くありません。
表6にキッチンの基本レイアウトを整理します。
表6 キッチンの基本レイアウト
配列スタイル |
概要 |
I型(1列型) |
当マンションの標準のキッチン。料理作業の流れに対応して壁面に沿って設備を一列に配置するレイアウト。冷蔵庫は流し台の隣りに配置。 |
II型(2列型) |
調理者を挟んで反対側にカウンターを設けることで作業場所を分散させ、I型では長くなる動線を短くするもの。当マンションの標準のキッチンでLDとKを仕切る壁のK側にカウンターを造作するとこのレイアウトとなる。 |
L型 |
I型では長くなる動線をL型に配置することで動線を短くするもの。当マンションではLDとKを仕切る壁の撤去が必要。シンクとレンジの位置は排気ダクトと共用部のキッチン系統排水管との接続に無理のない配置が必要。 |
U型 |
I型では長くなる動線をU型に配置して動線を短くするもの。当マンションではLDとKを仕切る壁の撤去が必要でLD側は狭くなる。シンクとレンジの位置は排気ダクトと共用部のキッチン系統排水管との接続に無理のない配置が必要。(当マンションで対面タイプを実現する配置) |
アイランド型 |
キッチンの一部を島のように独立させて配置するスタイル。当マンションではキッチン系統の排水管の横引排水管が床より17cm(管中心)の高さにあるため、アイランド型の実現にはこの排水管を納めるために最低25cm程度、床の高さを高くする必要がある。コンクリート構造物は共用部でレンジフードを吊下げるために新たにアンカーを打つことは不可能なため、コンロをアイランド部に配置するのにレンジフードの固定が課題となる。 |
壁付けI型、壁付けL型(ベニンシュラー型) |
壁面からキッチン(流し台、レンジ機能含む)を半島のように突き出させるタイプ。排水管の制約から壁付けL型が想定される。シンクとレンジの位置は排気ダクトと共用部のキッチン系統排水管との接続に無理のない配置が必要。 |
(3) 生活とキッチンのスタイル
日常生活でのキッチンの位置づけによって表7のようにキッチンのスタイルを分類できます。
表7 キッチンのスタイル
キッチンのスタイル |
概要 |
クローズドタイプ |
キッチンを1室として独立させたタイプ。来客が多かったり、生活感を感じさせるものを隠したい人向け。当マンションのキッチンはLDとKを仕切る壁の上部に開口を設けているが一種のクローズドタイプ。 |
セミクローズドタイプ |
クローズドタイプのキッチンとダイニングの間の壁に窓を設けて、互いに両室の様子を確認できるようにしたもの。当マンションのキッチンはLDとKを仕切る壁に窓を造作し、K内の壁側にカウンターを設けることでセミクローズドタイプのキッチンとすることが可能。 |
オープンタイプ |
キッチン本体を壁付けにしてダイニングと一体化させたスタイル。当マンションのキッチンはLDとKを仕切る壁を撤去することでこのタイプとなる。LDKの広さは活かせる一方、キッチンが丸見えとなる。 |
セミオープンタイプ |
オープンタイプのキッチンとダイニングの間をカウンターで仕切ったスタイル。当マンションはLDとKを仕切る壁を撤去し、そこにカウンターを造作することでこのタイプになる。 |
オープン対面タイプ |
キッチンをダイニング側と対面する形で配置するタイプ。
(表6のアイランド型、壁付けI型、壁付けL型、また、U型に対応) |
(4) キッチンのリフォーム計画前の準備
キッチンは食事に関係するものの収納場所でもあり、表8に示すように保有する調理器具や食器、保存している食材などを書き出すことを通して必要な貯蔵スペースを把握することが必要です。電気製品はカウンターに設置することが多いことから、カウンターの面積の計画に役立ちます。また、(2)で述べたように将来、導入する冷蔵庫のサイズの検討も必要です。なお、これらの作業に並行して不用品の処分を行うことをお薦めします。
表8 キッチンに収納されるもの
収納物 |
概要 |
調理器具 |
小さなお子さんがいる家庭では包丁などの刃物は鍵がかけられる場所に収納 |
電気製品 |
電子ジャー炊飯器、冷蔵庫、電子レンジ、トースター、コーヒーメーカー、ジューサーミキサー、クッキングカッター、ハンドミキサー等 |
食器類 |
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食材 |
米、乾物、インスタント食品 |
洗剤など |
子どものいる家庭では鍵のかかる扉などの中に収納が必要 |
ゴミ箱 |
流山市のゴミ分別に準じたゴミ収納容器が必要 |
2. キッチンの選定
次にI型キッチンを中心にその選定に関する諸事項を解説します。
(1) 寸法
a. 間口
当マンションの標準の流し台とレンジ台の横幅の合計は210cmです。流し台から戸境壁の間隔は58cmで、設計当時主流の250リットルクラスの冷蔵庫(幅55cm)を想定した寸法ですが、近年、主流の350リットルクラス(幅60cm)の冷蔵庫を置くことはできません。
冷蔵庫の容量を重視する場合、キッチンの間口寸法を195cmとし、450リットルクラス(幅68.5cm)の冷蔵庫を流し台隣に設置可能とする考え方もあります。(注:奥行を長くすることで大容量とした冷蔵庫があります。冷蔵庫の奥行は63cm以下のものを選択するのが無難です。)
b. 奥行き
標準のキッチンの壁面から流し台の前端部までの距離(奥行き)は67cmですが、キッチンキャビネット自体の奥行きは55cmでその背面は給排水・ガス設備の設備スペースとなっています。排水管は戸境壁側の柱型の中のキッチン系統の立排水管に接続され、給水・給湯管は排水管とは逆の方向の洗面所側から配管されています。このため、システムキッチンのシンクキャビネット下の奥の給水・給湯管、排水管の設備スペースでは配管が納まらず、キャビネットの背面を配管スペース(12cm+α)として配管せざるを得ない場合が多くあります。これにより配管スペースとシステムキッチンの奥行き(65cm。60cmを用意するメーカー有)の和がキッチンのワークトップの前端部となり、通路幅が狭くなります。システムキッチンの機種を選択する場合、このことを理解の必要があります。なお、「マンションリフォーム対応」のシステムキッチンではキャビネットの背面に配管のための切り欠きがあり、標準のキッチンとほぼ同じ位置に納められます。
キッチンの通路幅は80cmが設計上の基本寸法とされます。冷蔵庫をキッチン内に搬入・据付けたり、調理する人の後ろを別の人が通る状況を想定して通路幅を確保する必要があります。
c. ワークトップ(天板)の高さ
当マンションの標準の流し台のワークトップの高さは80cmです。ワークトップの高さは、様々な式が提唱されていますが、「天板高さ=身長÷2+5cm」を目安とされることが多いようです。調理や洗い物など、毎日の作業となりますので、日常的に使う人の体格にあったサイズの選定が望ましいといえます。
選べるワークトップの高さはメーカー、システムキッチンのグレードにより異なりますが、82cm、85cm、90cmというようにいくつかの寸法が揃えられています。なお、台輪部分もスライド収納としたい場合、選定可能な高さが限られる場合があります。
(2) 仕様とオプションなど
a. 仕上げ材(ワークトップ、キャビネット)
システムキッチンのキャビネットは木製キャビネットと、ホーロー鋼板あるいはステンレスキャビネットに大別されます。木製キャビネットのみを取り扱うメーカーが多いですが、両方を取り扱うメーカーでは耐久性などからホーローやステンレスキャビネットを上位機種としています。
ワークトップの材質はステンレスと人造大理石に大別されます。メンテナンス性では熱や汚れに強いステンレスが優れていて、近年はエンボス加工でより傷つきにくいものも登場しています。人造大理石はデザイン性に優れていますが、熱に弱いことから取り扱いに注意が必要です。
キャビネットの表面仕上げには木、化粧シート(各種)、塗装、アクリル、ホーロー、ステンレスなど各種あります。ホーロー製、ステンレス製の表面仕上げは掃除などのメンテナンス性や傷付きにくい特長があります。機能重視か、デザイン重視かが選択のポイントとなります。なお、扉の取っ手は仕上げと組合せて選択することになりますが、小さなお子さんがいる場合、刃物や漂白剤などに手を出せないように取っ手に鍵をつけられることの配慮も必要です。
この他、椅子で座った姿勢で作業ができるように足元を空間としたキャビネットをオプションとする製品もありますので、長時間の立ち姿勢に負担を感じる方には選択が検討されます。
b. シンク部分の板厚、形状
安価な流し台ではシンク部に薄いステンレス板を使い、上位機種と0.2mmの差があるとするメーカーもあります。薄いシンクは水はね音が大きく、日常生活での騒音となります。見た目のよいキッチンもシンク部分を軽く叩いて音を確認することが必要です。シンク部の排水口が中央になく、ワークトップの側板に近い位置に配置されるものは、立排水管との距離が十分とれず、シンクから排水音が聞こえる場合があります。シンクは中央部に排水口があるものを選びます。
c. 収納
キャビネットが扉タイプの場合、様々な大きさのキッチン用品の収納には内部スペースが十分に活かせません。そこで近年、引き出しタイプ(スライド収納)のキャビネットが多くなり、台輪部分のスペースも収納とする機種も登場しています。扉タイプに比べてキャビネットの奥に収納したものを取り出しやすい利点もあります。
d. 食洗機
塗り物の食器などの適さないものがありますが、食洗器は使い方によって生活を便利にします。別置きの食洗器もありますが、広さが重要なワークトップをフルに使うにはキャビネット組込みタイプが有利です。従前、間口が広くないと食洗器の組込みが困難でしたが、現在、間口195cmから食洗器組込みが可能な製品(タカラスタンダード)も登場しています。
日常、使うものですから運転音の小さいことやランニングコストの低いこと(1回の洗浄に20円+αほどが目安)を選定のポイントとします。食洗機を組込むにはアース付きの電源コンセントをメーカー指定の位置に増設する必要があります。壁型に取り付けられたアース付きコンセントから送りの配線を柱型内から排水管横を通して配置する方法が考えられます。
e. ガスレンジ
標準のコンロ台は60cmで、この幅にあうガスコンロで中華鍋で調理する場合、鍋に沿って高温の気流が壁面近くを流れます。消防法は『コンロの左右(背面)の15cm以内の壁の高さ1mの範囲』は不燃材料としなければならないと既定します。システムキッチンのレンジ用キャビネットの幅は75cmで、コンロが壁面から15cmの離隔距離がとれるようになっているのはこの配慮です。 2008年10月より、全口安全サンサー付きガスコンロの製造販売が法制化されました。
f. IHコンロ
ガスコンロが着衣着火の事故や住宅火災の原因となることが多いため、そのような心配のないIHコンロへの更新が増えつつあります。
当マンションの住居は契約アンペア50Aを範囲としてIHコンロの導入が可能です。IHコンロはIHクッキングヒーター(磁力線の働きで発熱)とラジエントヒーター(ヒーター自体を発熱)の組合せが無難です。IHヒーターから発生する電磁波(磁界強度)は微弱ですが、心臓ペースメーカーにさまざまな種類があり、使用する人の個人差も大きいため、心臓ペースメーカーを使用される方が住まわれている場合、専門医師に相談の上、導入を検討する必要があります。
電気配線は「4. (3) キッチンのIH化」、換気設備は「2.5.3 (2) b. 排気設備(レンジフード)」を参照してください。
g. ディスポーザ 【使用不可】
流山市は公共下水道の使用について、「油や野菜くずなどを流さない」、「台所シンクでディスポーザ(生ごみ粉砕機)の使用をしない」などを定めています。従って市の公共下水道へ接続する当マンションではキッチンにディスポーザを組み込むことはできません。
3. キッチンリフォームの実際
(1) キッチンの選定とリフォーム
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間口:210cm(流し台(P-150)、
ガス台(PG-60、立上り付)の組合せ。吊戸棚(T-150P、T-50.5P))
流し台前端部から壁面までの奥行き:67cm(15cm幅の水切りカバー(高さ92cm、垂部長さ4cm)と奥行き55cmのキッチンセットの組み合わせによる)
流し台高さ:80cm |
図5 標準のキッチン(タカラスタンダード、奇数号室)
図5に標準キッチン(奇数号室)の配置、表9と図6にI型を中心に、当マンションにおけるキッチンリフォームの方法(キッチンセットやシステムキッチンの選定方法)をまとめます。
実際の計画にあたってはこれらの知識をもとに各メーカーのショールームの相談窓口を利用したり、信頼のおけるリフォーム業者を選定してください。
表9 キッチンリフォームの方法(標準のキッチンの位置に設置)
リフォーム案 |
内容 |
キッチンセット |
標準のキッチンセットを同じ間口の新しいキッチンセットに更新。キッチンの設置工事、軽微な給排水管工事、ガス工事が必要。@の方法では安価にキッチンを更新可能。
@流し台高さ80cm
水切りカバーは流用も可能であるが、経年による外観的劣化から更新を考えるとそれなりに費用が発生。
A流し台高さ85cm
調理者の身長にあわせて台輪スペーサーでキッチンセットのワークトップを高くする。水切りカバーを高い位置とする必要があり、水切りカバーの更新と水栓の工事が必要。水きりカバーをタイル面に取り付ける場合(ネジ留めと接着の2つの方法があり、タイル面と水切りカバーの間はシーリングが必要)、タイルの仕上げ厚さ分(約5mm)、キッチンを若干、手前に設置が必要。 |
「カンタン取替システムキッチン」(タカラスタンダード) |
標準のキッチンセットを同じ間口の「カンタン取替〜」に更新。キッチンの設置工事、軽微な給排水管の接続工事、ガス工事が必要。メーカーは限定されるが安価にワークトップ一体のキッチンに更新可能。
@流し台高さ82cm
キッチンセットの流し台高さ80cmの解説に準じる。
A流し台高さ87cm
キッチンセットの流し台高さ85cmの解説に準じる。 |
マンションリフォーム対応システムキッチン
(タカラスタンダード) |
マンションリフォーム対応システムキッチンは、キッチンキャビネット背面に幅10cmの設備配管スペースの切り欠きを設けたもの。当マンションの専有部分のキッチンの給排水の横引管は壁面より12cm、床面より25cmの高さの範囲にある。このため、キャビネットを壁面より2cm離した位置とする必要があり、隙間の建築的処理が必要。ワークトップの奥行き65cmと2cmの和67cmは標準設置のキッチンとほぼ同等の壁面からの距離となる。
キッチンの設置工事、給排水管の接続工事、ガス工事が必要。 |
システムキッチン(一般) |
キッチンキャビネットの背面にキッチン系統の給排水の横引管の配管スペース12cmを設ける必要があるため、キャビネットを壁面より12cm以上離して設置することが必要。間口(268cm)全てをワークトップとする場合、柱型とキッチンキャビネットの奥行きの和が必要寸法となり、65cm幅のワークトップを選んだ場合、壁面から最大82cmの位置がワークトップの前端となる。壁面とワークトップの間を処理するための棚などの造作が必要。
キッチンの設置工事、給排水管の接続工事、ガス工事が必要。 |
【I型 (一般のシステムキッチン) 】
標準と同じ210cmの他、195cmとすることも可。キャビネット背面の配管スペースのため、通路幅が狭まる。間口(268cm)全体をワークトップとすると更に通路幅が狭まる場合がある。

【I型 (マンションリフォーム対応キッチン)】
マンションリフォーム対応キッチンで通路幅を確保。図は210cmの間口であるが、間口を195cmとして450リットルクラスまでの冷蔵庫に対応させることも考えられる。

【II型セミクローズタイプの配置例】
KのLD側の壁にカウンターと窓を造作し、II型のセミクローズタイプとした例。

【II型セミオープンタイプの配置例】
LDとK間の壁を撤去して幅広のカウンターを設け、II型のセミオープンタイプとした例。対面キッチン的に使える。

【U型オープン対面タイプの配置例】
排水管の経路とレンジフードの位置を考慮した配置

図6 キッチンリフォームの配置例
(2) キッチンリフォームにおける給排水設備工事、換気設備工事
キッチンには給水管、給湯管、排水管、ガス管、排気ダクトが接続されています。
a. 給水・給湯、排水管
キッチンの排水管は洗面・浴室系統の排水管およびトイレの汚水管と同様に1階と2〜9階では配管の位置が異なります(図7参照)。

[2〜9階 立面図]

[1階 平面図]
図7 キッチン設備配管 (奇数号室)
キッチン系統の排水は微細な食物の屑、米のとぎ汁、汁の残りなど様々なものが流されます。その流れ方は、排水管内を水が満たされて満流の状態で流れることは少なく、部分流がほとんどです。排水横枝管は流速が遅すぎると自掃力がなくなり、固形物が管内に残り、一方、流速が早すぎても水が先に流れ、固形物が管内に残り、いずれも管内壁の固形物の付着の原因となります。キッチン系統の排水管内は微生物によるぬめりが発生・成長して有効断面積を狭める環境にあることから、適切な流速に保つ水勾配(1/50程度)とし、流速を変化させる管の曲がりの数を少なくなるように配管するのが設計上の原則となります。
リフォーム事例としてI型を中心に解説したのは、キッチン系統排水管の共用部となる立排水管から専有部分の横枝管の継手の方向から、無理のない配管経路となることによります。
給排水設備改修工事(2008年)では更新したキッチン系統の排水枝管にソケットを設け、将来、キッチンの更新する場合、そのソケット部からキッチン側の配管を更新するものとしています。給水管は更生工事を袋ナットを取り付ける配管のところまで行っています。リフォーム工事におけるこれらの工事方法は巻末の【技術資料】を参照してください。
b. 排気設備(レンジフード)
ガスコンロの燃焼ガス、熱、臭いの排出にレンジフードは不可欠で標準(350m3/hの風量)のキッチンフードは廊下の天井内にあるダクトに接続されています(図8)。リフォームにおいてはマンション対応のシロッコファンのレンジフードを選択します。ダクトの曲がり部分やジャバラ形状のものは空気抵抗が大きく、排気能力の低下や騒音の原因となるため、その経路に注意が必要です。消防法により火元とグリスフィルターは80cm以上の距離をとるものとされています。
IHクッキングヒーターは燃焼ガスの発生はありませんが、「調理に伴う水蒸気・オイルミストを排出するためにはガス厨房と同様の換気量が必要」として、東京都の建築設備の設計・施工上の指導指針で家庭用のキッチンでは300m3/h以上の換気量とする事になっています。

図8 キッチンのフードと排気ダクト(奇数号室)
4. キッチン関係の建築仕上げ工事
キッチンの入れ替えに伴い、壁面などのリフォーム工事が必要となります。タイル面は石膏ボードから壊してリフォームする方法もありますが、工事期間の短縮などの面から汚れの落としやすいキッチンパネルを上貼りする方法がよく採用されます。
キッチンの床仕上げはクッションフロアとなっていますが、既存のクッションフロアを剥がしてクッションフロアを張り直す方法、既存のクッションフロアの上にクッションフロアを上張りする方法、また、キッチンキャビネット下以外の歩行部分をフローリングとする方法があります。フローリングとする場合には、LL40以上の規格とする他、水に弱いことから水をこぼした場合の対策などを考慮する必要があります。
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