クローゼットの改修(案)

 

 機械設計をしていた時期があります。そして市場に出回っている標準部品を如何にうまく使いこなすかが、品質、コストダウン、納期短縮を図る上で設計者の腕のみせどころであることを学びました。建築も市場に出回っている部品を使うという面で共通します。

 

戸の部分の改修

 A2タイプなどの8.4畳の洋室のクローゼットは、塩ビシート焼付仕上の鋼板製折れ戸となっています。仕上げの質感、開閉時の音の発生など、改善したい部分です。
 このクローゼットの開口部の寸法は幅149cm×高さ210cmです。

表1 戸の形式と特徴

形式 特徴
折れ戸 開き戸は大開口をとれることを特長とする。149cmのクローゼット幅を開き戸とした場合、1枚の戸の幅が74.5cmとなり、クローゼットの手前側の空間にこの開閉に対応したスペースをとることが必要となる。折れ戸ならば大開口の特長を損なわず、その必要空間を少なくすることができる。
引き戸 折れ戸ではその手前に置けるものが制約されるのに対して、引き戸ではこの制約がない。開口の横幅は[開口部の幅]÷2以下の寸法で制約される。

■ 折れ戸の検討

 ホームセンターで売られている折れ戸の幅は、0.75間(1236mm)、1間S(1635mm)の定尺で す。0.75間のものならば開口部側をこの寸法に合わせて開口部の寸法を狭めることで適用できます。しかし、おおがかりな大工工事が必要となります。
 開口部の寸法をこのままとする場合、折れ戸の特注となります。(例えば松下電工の「クローゼット扉レセンテ」のナチュラルNX-Eシリーズのフラットタイプを選んだ 場合、希望小売価格170,000円(材料費のみ))。折れ戸では、安価にクローゼットの戸の品質感を高めるのは難しそうです。

■ 引き戸の検討

上吊式引戸金具 HRシステム 標準タイプ (アトムリビングテック(株))


引き戸によるシミュレーション
 クローゼットの開口部の壁厚(軽鉄)は70mmです。ホームセンターで売られているフラッシュドアに764×2000×32(mm) を2枚用いて引き戸とすることで、壁厚に納まり、開口時の幅72cmを確保できます。
 取り付けは和室と同じようになるように上下に引き戸用の木枠を取り付ける方法が、まず、考えられます。この方法では床側に段差ができます。また、クローゼット内の掃除を考えると内部の床の高さを上げることが必要と思います。
 そこで上吊式引戸金具の使用が考えられます。Webを調べ、上吊式引戸金具 HRシステム 標準タイプ(アトムリビングテック(株))を見つけました(上の図)。金具類は税込・送料別で12,000円ほどで入手できます。高さ方向 は開口部の上部を木で調整すれば納まりがつきそうです。2枚のフラッシュドアは端部に化粧用木目テープを貼る必要がありますので、全体で30,000円程度の材料費 となります。

 引き戸で気になるのが開口部の大きさ。松下電工に「クローゼット扉レセンテ上吊り3枚引き戸」という製品があります。利用できるのが枠外幅163.5cmの1間S、高さ203.5cmの7尺の既製品(XKRH374●E)です。既存の開口幅にあうように上下の枠を短くし、上部枠と既存の開口部下の隙間を埋める造作をしたとして、55.6cm幅の3枚引き戸で得られる開口幅は計算上、最大90cm。しかし、枠の奥行が約13cmで既存壁厚7cmから大きくはみ出るため、枠の納まり処理は難しいものがあります。また、引き戸の仕上げは1間Sの製品の流用による戸を閉じた状態でのデザインに違和感がないようにフラットタイプに限定されることになります。(フラットタイプで希望小売価格77,900円)。引き戸については2枚で納めるのが無難なようです。

 

IKEAのワードローブシステムの利用

 IKEA 船橋のショールームのワードローブのコーナーで、組合せて150cmの幅に対応できるPAX & KOMPLEMENTを見て、「ひっとして・・」と50cm幅と100cm幅のフレームの横幅を実測してみると49.6cmと99.6cmでした。クローゼット部の横幅149cmを若干越えますが、クロスによる仕上げ代などを考えると、奥行は67cm(扉取り付け部の7cmの壁厚を含む)ありますし、梁(クローゼットの中に梁が露出していて梁下までの高さは198cm)に干渉する部分のフレームを加工すれば、IKEAのワードローブシステムをクローゼットの中に納めることも不可能ではないように思われます。


HOPEN/KOMPLEMENT システム

 IKEAのPAX & KOMPLEMENTのシステム部品で、W75xD60xH201cmのフレーム2台と収納した中味が見える強化ガラスの引き戸PAX LYNGDALを組合せて左の写真のような 150cm幅に対応したワードローブ(W150xD66xH201cm)を構成できます。
 上記のように横幅が既存のクローゼットに収まるかどうかがポイントとなりますが、これが可能であれば、既存の開口部とワードローブの上部の隙間の建築的処理を行なうことで近代的なクローゼットを実現できます。
 また、W100xD60xH201cmとW50xD60xH201cmのフレームを組合せ、全面が鏡の開き戸PAX VIKEDAL(W50cm)を3枚組み合わせ、外出のチェックや鏡の錯覚で部屋を広く見せる効果も産み出すことができます。なお、寝ぼけ眼で自分の姿を鏡で見てびっくりする のではないかと当初、考えたのですが、カーテンで鏡を隠せるようにすれば問題ないことに気づきました。

PAX LYNGDALでのシミュレーション

PAX VIKEDALでのシミュレーション

 計算どおりうまく納まるかどうかは各住居の施工誤差もあり、やってみないとわからないのが実際です。ただ、IKEAのPAX & KOMPLEMENTはハンガーレール、棚板、引出などのシステム化に対応していて日本の同種の製品では考えられない価格設定がなされていることから、成功すれば、戸の部分を将来的に別のものに交換してイメージチェンジが図れるなど、得られるメリットは高いものです。